差別化について。サービスや製品、コンセプトなど、あらゆる所で「差別化」という言葉を見聞きします。それが大切である事は十分理解しているのですが、なかなか差別化に繋がるような斬新な発想は生まれません。何か良い考え方やコツがあれば教えてください。

非常識な人になってください。

 

基本的に差別化されているものって、その業界やジャンルやコンセプトにおいて、非常識である場合が多いですよね。

非常識でない差別化って存在しないのではないかと思うんですよ。ないというか、それは差別化とは言わないんじゃないかなと思うんですよね。

差別化について考える時に「差別化しよう、差別化しなければ」と考えてしまうと、柔軟な発想って生まれにくいんですよね。どうしてもやっぱり「良いことをしよう」「うまいことやろう」という意識の縛りから抜け出せないんです。

なので『差別化』って言葉は一旦忘れて、「非常識なことをしよう」と考えるのが良いです。

だいたい世の中でイノベーションを起こしてきたものって非常識で、最初はめっちゃ非難されてるんです。

例えばダイソンの掃除機とか、中身が見えるなんて非常識極まりない。吸い取ったムカデが丸見えなんて非常識極まりない。でもそれが良かったんですよね。何が取れてるかわかるから。ムカデがどないなってるのかがわかるから。

新たな価値を生み出そうなんて考え出すともう何も閃きません。開き直って非常識なことを考えるんです。

非常識すぎて、非難されそう。
非常識すぎて、怒られそう。
非常識すぎて、売れなさそう。

そう言ったアイデアをどんどん出す。それが差別化のヒントになるんです。

だって誰もやらないから。

非難されたり怒られたり売れないことなんて、誰もやらないでしょう。

「掃除機なのにゴミが見える」ような、他がやらない非常識なことを見つけて、それが価値を持つように筋を通す。「中身がわかる」とか。そうすれば差別化は作ることができます。

後付けでいいんです。先に差別化要素を作っちゃって、それを無理やり正当化する。

怒られそうなことって、無限に思いつくじゃないですか。僕たち人間は。  

で、非常識なことって他では常識だったりすることが多いんですよね。つまり別の業界やジャンルの慣行に非常識→差別化のヒントがあるわけです。

例えば、外食で「立ち食い」なんて、言うまでもなく非常識ですよね。

でも立ち食いそばってそれが普通なわけです。お客さんは立ち食いであることに何の疑問も抱いてない。そう言うもんだから。あれは回転率をあげて「安さ」「早さ」「手軽さ」って価値を生み出してるんですよね。

それを取り入れたのが「俺のフレンチ」とか「いきなりステーキ」ってことです。まぁ今は立ち食いではないみたいなんですけど、フレンチとかステーキで立ち食いなんてまず考えないじゃないですか。非常識ですよね。

でもその非常識が立ち食いの持つ強み、すなわち「安さ」「早さ」「手軽さ」を生み出して、お客さんに今までになかった価値を提供したわけですね。

つまり、どこかで常識的なことって、それ自体が何かしらの価値を生んでいるんです。立ち食いが常識的な世界では、それ自体が「早さ」「安さ」「手軽さ」を生んでる。

となれば、自分の世界ではたとえ非常識なこと(立ち食い)でも、そうした別の所で常識とされている事(立ち食い)を取り入れることで、それ自体(立ち食い)が生み出している価値(「早さ」「安さ」「手軽さ」)をそのまま取り入れることができますよね。

 

さらに具体例を出すと、差別化的な話でよく出てくるのが1000円カットのQBハウスですね。

『ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する』に詳しく書かれています。

QBハウスは右のような慣行全てを問い直した。

「多くの人々、とりわけビジネスパーソンは、髪を切ってもらうのに1時間も費やしたくないはずだ」との考えをもとに、タオル、肩揉み、お茶やコーヒーといった感覚志向のサービスをやめた他、ヘアトリートメントもせずに、主に散髪だけをすることにしたのである。

その上でQBハウスはさらに一歩踏み込んだ。ホースを用いてカット後の毛くずを吸い取るエアーウォッシャーというシステムを導入して、シャンプーやドライヤーなど時間のかかる作業を省いたのである。この方が、顧客の髪を濡らさずにすみ、従来よりもはすかにスピーディーで優れた方法だと言える。

こうした取り組みによって、ヘアカットの時間は1時間から10分へと短縮できた。しかも、各店舗の外に信号機のような装置を置いて、空きユニットの有無を表示しているため、予約担当が不要となった他、顧客もあてもなく待たされる事がなくなった。(p127)

ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する

今でこそ当たり前になった1000円カット市場なんですけど、あれは散髪業界ではまぁ非常識だったわけですよ。当時1000円でカットのみなんてサービスはなかったので。

一般的な散髪屋とか美容院は、ホットタオルとお茶が出てきて、シャンプー、マッサージ、世間話があって、スタイリングまでしてくれて、そう言ったいろんなサービスが組み込まれた中の一つに髪を切るって工程があるわけじゃないですか。

でも「そんなのいらないからただ髪を切ってくれ」と思ってる人もやっぱりいるわけなんですよ。

例えば、忙しいサラリーマンやヘアスタイルに興味のない人からしたら、毎回5000円も払って、様々な不要なサービスがついてる散髪屋や美容室に行くのはかなり気が重いわけですよ。かと言って自分で切るわけにもいかない。とにかくただ…髪を切ってくれ…頼む…

つまりそのニーズと業界の非常識がマッチしたんですよね。

ただ切るだけ。余計なサービスは一切ない。切った髪は専用の掃除機みたいなやつで吸い取るからで頭も濡れない。30分1000円。これや。

ってことです。

これもつまり、「早さ」「安さ」「気軽さ」の導入ですよね。立ち食いそばや牛丼チェーン的な価値を散髪業界に取り入れたわけです。

てか世の中は「髪も切れて、シャンプーもしてもらえて、さらにお喋りもできて、ストレス発散になるし美容室最高」って思ってる人が大半を占めていることにびっくりします。嘘つけ。

話戻ります。

そんな感じで、圧倒的な差別化で業界内で独自のポジションを築き上げているものはだいたい非常識なわけです。

 

あと他の例でいうと、ゴールデンボンバーですね。

あれめっちゃ非常識じゃないですか。演奏しないんですよ。バンドなのに。演奏しない代わりに「お笑い」の要素を取り入れたんですよね。

それまでもバンド界隈でコミックバンド的なポジションはありましたけど、あくまで演奏ありきでの「お笑い」だったわけじゃないですか。一般的にライブハウスで活動するバンドが「演奏しない」なんて非常識極まりないんです。

でもその「演奏せずにお笑いに振り切る」という非常識が圧倒的な差別化を作ったんですよね。

ただこれもさっきのQBハウスと同じで、ちゃんと価値を提供できたから成功したんです。

1000円カットで前髪ガッタガタとかなら意味ないじゃないですか。それなりに満足のいく仕上がりだから成功してるのであって。

ゴールデンボンバーも演奏しない代わりに「ちゃんと面白い」から成功したのであって。

あれが全っっっっっっっっ然面白くなかったら何も意味ないですもん。

お客さんの「楽しみたい」というエンターテイメントに求める根源的な欲求を「演奏」ではなく「笑い」で満たした。

音楽業界では非常識でも、お笑い業界では常識的な「笑わせる」を取り入れた。そういうことです。

必ずしも「演奏」でお客さんを満足させる必要はない。そうやって根本の常識を疑うこともヒントになりそうですよね。素晴らしい演奏は他がしてくれる、自分たちは別の楽しみを提供する。そんな発想があるといいですね。

もちろん「何かのスキルや提供できるもの」があった上での非常識なので、そこはしっかりと取り組んで行きたいところですよね。

もしあなたが、そうしたものを持っているのであれば、非常識な人になってみるのはおもしろいんじゃないでしょうか。

ぜひお試しください。


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ブルー・オーシャン戦略―――競争のない世界を創造する

ブルーオーシャンを創造する企業の多くは、形態は異なっていても機能や効用を同じくする製品やサービスを提供する、別の業界から顧客を惹きつける。T型フォードが着目したのは馬車だった。(p196)

1000円カットのQBハウスや、ZARA、シルク・ドゥ・ソレイユなど、各業界で圧倒的な差別化に成功した唯一無二のビジネスが、どのようにして生まれたか。

あなたがビジネスを始めるにあたり、必ずヒントが見つかる一冊。この本が僕の着眼点を育ててくれたと言っても過言ではありません。僕がどれだけ読み込んでヒントを得たか、付箋の量がそれを物語っています。

p172の『ストリートファニチャー』のエピソードには「なるほど!」と思わず声を出してしまったことを覚えています。